蝦夷生計図説

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"キタイ": 11 件ヒット

第7巻, 14ページ, タイトル:
さすといへるは、もと 本邦の言葉にして、 茅葺の屋を造る時図の如く左右より木を合せ たるものをいふ也、是を夷人の語に何といひしにや 尋る事をわすれたる故、追て糺尋すへし、    本邦に用るところとハ少しくたかひたるゆへに図し たる也、此外屋に用る諸木のうち、棟木は造れる さま常の柱とたかふ事あらす、是を夷語にキタイ ヲマニといふ、キタイは上をいひ、ヲマは入る事をいひ、ニは 木をいひて、上に入る木といふ事なり、梁は前に図し たる桁と同しさまに造りて用ゆ、是を夷語に イテメニといふ、其義解しかたし、追て考へし、又   本邦の茅屋にながわ竹を用る如くにつかふ物をリカ ニといふ、是は細き木の枝をきりてゆかミくるいとふ有 ところは削りなをして用る也、此三種のもの大小のたかひ あるのミにて、いつれも常の柱とことなる事ハなきゆへ、 別に図をあらハすに及はす、 ☆ 「さす」というのはもともとわが国のことばで、茅葺きの家を造るとき、図のように左右から木を合わせたものをいうのである。これをアイヌ語でなんというのか聞くのを忘れたので、改めて聞きただすことにしよう。 (さすは)わが国で用いているものとはすこし違っているので図示したのである。このほか、家で使う種々の木のうち、棟木を造るようすは通常の柱と違うことはない。これをアイヌ語でキタイヲマニという。キタイキタイ:kitay/てっぺん、屋根】は上ということ、ヲマ【オマ:oma/にある、に入っている】は入ることをいい、ニ【ニ:ni/木】は木をいうから上に入る木ということである。 梁は前に図示した桁と同じように造って使う。これをアイヌ語でイテメニ【イテメニ:itemeni/梁】という。その意味は解釈できない。改めて考えてみたい。 また、わが国の萱葺きの家でながわ竹?を用いるように使うものをリカニという。これは細い木の枝を切って、ゆがみや狂いなどがあるときは削りなおして使うのである。これらの三種類のものは、大小の違いあるのみで、どれも通常の柱と違いはないので、格別、図示することはしない。
第7巻, 23ページ, タイトル: キタイマコツプの図 
第7巻, 24ページ, タイトル:
是は家のくミたてとゝのひてより、屋をふくさま也、 キタイマコツプといへるは、キタイは屋をいひ、マコツプは葺 事をいひて、屋をふくといふ事也、屋をふかんとすれは、蘆 簾あるは網の破れ損したるなとを屋をくミたてたる 木の上に敷て、其上に前に録したる葺草の中いつれ なりともあつくかさねてふく也、こゝに図したるところハ 茅を用ひてふくさま也、この蘆簾あるハ網とふのものを 下に敷事ハ、くミたてたる木の間より茅のこほれ落るを ふせくため也、家によりては右の物を用ひす、木の上を すくに茅にてふく事もあれとも、多くは右のものを 下に敷事なり、    ここにいふ蘆簾は夷人の製するところのものなり、 網といへるも同しく夷人の製するところのものにて、 木の皮にてなひたる縄にてつくりたるものなり、 すへて夷人の境、障壁とふの事なけれハ、屋のミにかき らす、家の四方といへとも同しくその屋をふくところの ☆これは家の組み立てができてから屋根を葺くようすである。キタイマコツプというのは、キタイキタイ:kitay/てっぺん、屋根】は屋根をいい、マコツプ【アク*プ?:akup?/葺く】は葺くことをいうので、屋根を葺くということである。屋根を葺こうとするには、芦簾あるいは網の破れ損じたものなどを屋根を組み立てる木の上に敷いて、その上に前述の葺き草のうち、どれでも厚く重ねて葺くのである。ここに図示したのは茅を用いて葺いているようすである。  この芦簾あるいは網などのものを下に敷くことは、組み立てた木の間より茅が零れ落ちるのを防ぐためである。家によってはそれらを使わず、木の上に直に茅で葺くこともあるけれども多くは右にあげたものを下に敷くのである。    <註:ここでいう芦簾アイヌの人びとが造ったものである。網も同じくアイヌ製のもので 木の皮を綯って造ったものである。> 総じてアイヌの人びとの国には障子や壁などというものがないので、屋根ばかりではなく、家の四周さえも同様にその屋根を葺く茅で囲うの
第7巻, 27ページ, タイトル: キキタイチセの図
第7巻, 29ページ, タイトル:
此図はシリキシナイの辺よりシラヲイの辺に 至るまての居家全備のさまにして、屋は茅を もて葺さる也、是をキキタイチセと称す、キは 茅をいひ、キタイは屋をいひ、チセは家をいひて、茅の 屋の家といふ事なり、前にしるせし如く、屋をふく にはさまーーのものあれとも、此辺の居家は専ら 茅と草との二種にかきりて用るなり、チセコツと いへるは其家をたつる地の形ちをいふ也、チセは家を いひ、コツは物の蹤跡をいふ、この図をならへ録せる事ハ、 総説にもいへる如く、居屋を製するの形ちはおほ よそ三種にかきれるゆへ、其三種のさまの見わけやす からんかためなり、後に図したる二種はミな此故と しるへし、 ☆ この図はシリキシナイのあたりからシラヲイのあたりまでの家の完備したすがたで、屋根は茅で葺いてある。これをキキタイチセという。キ【キ:ki/カヤ】は茅をいい、キタイキタイ:kitay/てっぺん、屋根】は屋根をいい、チセ【チセ:cise/家】は家をいうから茅の屋根の家ということである。前述のように屋根の葺き方にはさまざまなものがあるが、このあたりの家はもっぱら、茅と草の二種だけを使うのである。    チセコツというのは、その家を建てる敷地のかたちをいう。チセは家をいい、コツ【コッ:kot/跡、くぼみ】はものの あとかたをいう。この敷地の図を並べて記すのは総説でものべておいたように、家を造る際のかたちはだいたい三種類に限られるので、その三種類の形体を見分けやすくしようと考えたためである。後に図示した二種はミナこの理由によるのである。
第7巻, 30ページ, タイトル: シヤリキキタイチセの図
第7巻, 32ページ, タイトル:
此図はシラヲイの辺よりヒロウの辺にいたる まての居家全備のさまにして、屋は蘆をもて 葺たるなり、是をシヤリキキタイチセと称す、シヤリ キは蘆をいひ、キタイは屋をいひ、チセは家を いひて、蘆の屋の家といふ事なり、此辺の居家 にては多く屋をふくに蘆のミをもちゆ、下品 の家にてはまれに茅と草とを用る事もある なり、 右二種の製は四方のかこひを藩籬の如くになし たるなり、 ☆この図はシラヲイのあたりからヒロウのあたりまでの家の完備したようすで、屋根は芦で葺いている。これをシヤリキキタイチセという。シヤリキ【サ*ラキ:sarki/アシ、ヨシ】は芦のこと、キタイキタイ:kitay/てっぺん、屋根】は屋根、チセ【チセ:cise/家】は家をいうから、芦の屋根の家ということである。このあたりの家の多くは屋根を葺くのに芦だけを使う。下品の家ではまれに茅と草とを用いることもある。 右に図示した二種の造りは四方の囲いを垣根のようにしてある。
第7巻, 33ページ, タイトル: ヤアラキタイチセの図
第7巻, 35ページ, タイトル:
是はビロウの辺よりクナシリ島にいたるまての 居家全備のさまにして、屋は木の皮をもて 葺たるなり、是をヤアラキタイチセと称す、ヤア ラは木の皮をいひ、はタイチセは前と同しことにて、 木の皮の屋の家といふ事なり、たゝしこの木の 皮にてふきたる屋は、日数六七十日をもふれは 木の皮乾きてうるをひの去るにしたかひ裂け 破るゝ事あり、其時はその上に草茅とふをもて 重ね葺事也、かくの如くなす時は、この製至て 堅固なりとす、しかれとも力を労する事ことに深き ゆへ、まつはたゝ草と茅とのミを用ひふく事多し と知へし、木の皮の上を草茅とふにてふきたる さまは、後の図にミえたり、 ☆ これはビロウのあたりからクナシリ島にいたる家屋完備のようすである。屋根は木の皮で葺いている。これをヤアラキタイチセという。ヤアラ【ヤ*ラ:yar/樹皮】は木の皮をいい、キタイチセは前とおなじことで、木の皮の屋根の家ということである。ただし、この木の皮で葺いた屋根は日数六、七十日もたてば、木の皮が乾いて潤いがなくなるにしたがって、裂けて破れることがある。そのときは上に草や茅などでもって重ねて葺くのである。このようにしたときは、造りはいたって丈夫であるという。しかしながら、この作業は労力がたいへんなので、一応は草と茅だけを使って葺くことが多いと理解しておいてほしい。木の皮の上に草や茅などでふいているさまは後に図示してある。
第7巻, 36ページ, タイトル: トツプラツプキタイチセの図
第7巻, 37ページ, タイトル:
この図もまたビロウの辺よりクナシリ嶋に至る まての居家全備のさまにして、屋を竹の葉にて ふきたる也、これをトツプラツフキタイチセと称す、 トツプは竹をいひ、ラツプは葉をいひ、キタイチセは 前と同し事にて、竹の葉の屋の家といふ事也、 これ又木の皮と同し事にて、葺てより日かすを ふれは竹の葉ミな枯れしほミて雨露を漏すゆへ、 やかて其上を草と茅にてふく也、この製又至て 堅固なりといへとも、力を労する事多きにより て、造れるものまつはまれなりとしるへし、 ☆ この図もまた、ビロウのあたりからクナシリ島にいたる家屋完備のようすであって、屋根を竹の葉で葺いている。これをトツプラツフキタイチせという。トツプ【ト*プ:top/竹、笹】はたけをいい、ラツプ【ラ*プ:rap/竹などの葉】は葉をいう。キタイチセは前とおなじだから、竹の葉の屋根の家ということである。 これまた、木の皮とおなじで葺いてから日数がたてば、竹の葉はみんな枯れしぼんで雨露を漏らすようになるので、やがてその上を草と茅とで葺くのである。この造りはまたとても丈夫なのだけれども労力がたいへんなので、これを造っているものはまず少ないと理解してほしい。

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