蝦夷生計図説

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"アツトシ": 17 件ヒット

第6巻, 3ページ, タイトル: 衣服製作の総説
衣服製作の総説 凡夷人の服とするもの九種あり、一をジツトクと いひ、二をシヤランベといひ、三をチミツプといひ、 四をアツトシといひ、五をイタラツペといひ、六をモウウリといひ、 七をウリといひ、八をラプリといひ、九をケラといふ、 シツトクといへるは其品二種あり、一種ハ 本邦より わたるところのものにて、綿繍をもて製し、かたち 陣羽織に類したるもの也、一種は同しく綿繍 にて製し、形ち明服に類したるものなり、夷人の 伝言するところは、極北の地サンタンといふ所の人カラ フト島に携へ来て獣皮といふ物と交易するよしを いへり、すなはち今 本邦の俗に蝦夷にしきと いふものこれ也、この二種の中、 本邦よりわた るところのものは多してサンタンよりきたるといふ ものハすくなしとしるへし、シヤランベといへるは 衣服製作の総説 ☆一般にアイヌの人びとが衣服としているものに九種類ある。一はジツトク、二はシヤランベ【サランペ:saranpe/絹】、三はチミツプ【チミ*プ:cimip/衣服】、四はアツトシ【アットゥ*シ:attus/木の内皮を使った衣服】、五はイタラツペ【レタ*ラペ?:retarpe?/イラクサ製の衣服】、六はモウウリ【モウ*ル:mour/女性の肌着】、七はウリ【ウ*ル:ur/毛皮の衣服】、八はラプリ【ラプ*ル:rapur/鳥の羽の衣服】、そして九はケラ【ケラ:kera/草の上着】である。 ☆ジットクというものには二種類ある。一種は本邦より渡ったもので、錦で作られたもので、かたちは陣羽織に類するものである。いまひとつはおなじく錦で作られており、そのかたちは明の朝服に類するものである。アイヌの人びとの伝えていうには、極北のサンタン【サンタ:santa/アムール川周辺】というところの地に住んでいる人びとがカラフト【カラ*プト:karapto/樺太】島へ持ってきて、アイヌの人びとのもつ獣皮というものと物々交換するのであると。これがいま世間でいう「蝦夷にしき」なのである。この二種類のジットクのうち、わが国からわたったものが多く、サンタンから来たものはすくないと知っておくべきである。
第6巻, 4ページ, タイトル:
本邦よりわたるところのものにて、古き絹の 服なり、チミツブといへるも同しく 本邦より わたるところの古き木綿の服なり、此三種の衣は いつれも其地に産せさるものにて得かたき品ゆへ、 殊の外に重んし、礼式の時の装束ともいふへきさま になし置き、鬼神祭礼の盛礼か、あるは   本邦官役の人に初て謁見するとふの時にのミ服用 して、尋常の事にもちゆる事はあらす、其中殊に シツトクとシヤランベの二種は、其品も美麗なるをもて、 もつとも上品の衣とする事也、アツトシ、イタラツベ、モウウリ、 ウリ、ラプリ、ケラこの六種の衣はいつ れも夷人の製するところのもの也、その中、モウウリ は水豹の皮にて造りしをいひ、ウリはすへて獣皮 にて造りしをいひ、ラフリは鳥の羽にて造りしを いひ、ケラは草にて造りしをいふ、この四種はいつれも 下品の衣として礼服とふには用る事をかたく禁
第6巻, 5ページ, タイトル:
するなり、たゝアツトシ、イタラツベの二種は夷人の 製するうちにて殊に上品の衣とす、其製するさまも  本邦機杼の業とひとしき事にて、心を尽し力を 致す事尤甚し、此二種のうちにもわけてアツトシ の方を重んする事にて、夷地をしなへて男女ともに 平日の服用とし、前にしるせし鬼神祭祀の時あるは 貴人謁見の時とふの礼式にシツトク、シヤランベ、チミツプ 三種の衣なきものは、ミな此アツトシのミを服用する事也、 其外の鳥羽・獣皮とふにて製せし衣はかたく禁 断して服する事を許さす、    凡この衣服の中、機杼より出たるをは尊ミ、鳥 獣の羽皮とふにて製したるを賤しミ、かつ 礼式ともいふへき時に服用する衣は製禁を もふけ置く事なと、辺辟草莽の地にありてハ いかにも尊ふへき事なり、其左衽せるをもて戎狄の 属といはん事、尤以て然るへからす、教といふ事のなき
第6巻, 6ページ, タイトル:
地なれは、其人から小児とことなる事なし、左手の 便なるものは左衽し、右手の便なるものは右衽 せるなるへし、すてに蝦夷のうちまれにハたれ 教るにもあらすして、右衽せるものもあるなり、 もし教化の明に開けんには、靡然として 本邦の人 物とならん事、何の疑かあるへき、 右九種の服のうち、其上下の品わかりたる事かく の如し、今この書に其図を録せんとするに、九種の うちジツトクは蝦夷錦と称して 本邦の人 熟知するところの物、シヤランベ、チミツプの二種ハすな はち 本邦の服なるをもて、此三種の衣は いつれも図をあらはすに及ハす、モウウリ、ウリ、 ラプリ、ケラ四種のものはいつれもたゝ鳥羽・獣 皮とふにて造れる事ゆへ、其製しかた別に 録すへきよふもあらす、こゝをもて唯其全備のさ まを一種つゝ図にあらハせり、たゝアツトシの一種のミハ
第6巻, 7ページ, タイトル:
其造れるさまも殊に艱難にて、 本邦機杼 の業とひとしき事ゆへ、其製しかたの始終本末 子細に図に録せるなり、イタラツベといふもアツトシ とひとしき物ゆへ、これ又委しく録すへき理 なりといへとも、此衣は夷地のうち南方の地とふにてハ造り 用る者尤すくなくして、ひとり北地の夷人のミ稀に 製する事ゆへ、其製せるさま詳ならぬ事とも 多し、しかれともその製するに用る糸は夷語に モヲセイ、ニハイ、ムンハイ、クソウといへる四種の草を 日にさらし、糸となして織事ゆへ、其製方の始末 全くアツトシとことならさるよしをいへり、こゝをもて 此書にはたゝアツトシの製しかたのミを録して、 イタラツペのかたは略せるなり、
第6巻, 9ページ, タイトル:
アツトシを製するには、夷語にヲピウといへる木の 皮を剥て、それを糸となし織事なり、またツキ シヤニといへる木の皮を用る事あれとも、衣に なしたるところ軟弱にして、久しく服用するに 堪さるゆへ、多くはヲビウの皮のミをもちゆる事也、 こゝに図したるところは、すはハちヲヒクの皮にして、 山中より剥来りしまゝのさまを録せるなり、是を アツカフと称する事は、すへてアツトシに織る木の 皮をさしてアツといひ、カプはたゝの木の皮の事 にて、アツの木の皮といふ事也、此ヲビウといへる木は 海辺の山にはすくなくして、多く沢山窮谷の中に あり、夷人これを尋ね求る事もつとも艱難の わさとせり、専ら厳寒積雪のころに至りて、山 中の遠路ことーーくに埋れ、高低崎嶇たるところも 平になり歩行なしやすき時をまちて深山に入り、 幾日となく山中に日をかさねて尋る事也、其外
第6巻, 12ページ, タイトル:
此図は剥来りしヲビウの皮を糸になさんとして、先温泉に ひたしやはらかになすさま也、図のことく温泉の所に持行て、 浅瀬に皮を□し、うへに木をのせ流れさるよふになし、日数 四五日程もつけ置キ、其皮のよくやハらかになるを待て温泉より 出し、湯のあかをとくと洗ひ落して日に□し、是をアツヲン といふ、アツはアツトシを織る木の皮をいひ、ヲンはやハらかになる事 をいひて、アツやハらかに成といふ事也、かくのことく温泉にひたし 日にさらして糸にさく計になしたるを、いつれの夷人も力の及ふ 限りハ貯へ置事、糧食の備をなし置と異なる事あらす、其皮を やハらかになさんとするに、もし温泉なき地にてハ、止事を得すし て常の池沼とふに□す事あれとも、皮のやハらきあしきゆへ 多くは是をなさす、遠方の地といへとも必す温泉の有 所に持行てひたす也、其辛苦せる事思ひはかるへし、すへて 皮を剥あつむるよりこれまてのわさハ夷人男女のわかち なく、ともーーに為すといへとも、糸につくるより後の事ハ 女子の業にかきる事なり、
第6巻, 14ページ, タイトル:
しな太布といふは、しなといへる木の皮にて織し ものなり、是は奥羽の民家にて此布をもて 衣に製し、農務およひ力を労する業をなす時 に服するものなり、とりもなをさす今蝦夷の 人服用するアツトシは、此製の遺風を伝へたると 見ゆるなり、 凡衣服を製する業のうち、此糸を績事尤かた き事にて、日かすを重ぬるにあらされは就しさる ゆへ、昼夜のわかちなく、聊のいとまもすてをかす して勤る也、時ありて旅行する事なとあれハ、 そのアツの皮を持行て夜々投宿のところおよひ 途中休息のところにても是を為す、其業を 勤るの心純一にして辛苦をかへりミさる事憐に たへたり、
第6巻, 19ページ, タイトル: アツトシカルヲケレの図 
第6巻, 20ページ, タイトル:
是は糸を綜る事とゝのひてより織さまを図し たるなり、アツトシカルといへるは、アツトシはすなハち 製するところの衣の名なり、カルは造る事をいひて、 アツトシを造るといふ事也、またアツトシシタイキとも いへり、シタイキといふは、なを 本邦の語にうつと いはんか如く、アツトシをうつといふ事なり、    本邦の語に、釧条の類を組む事をうつといへり、 其織る事の子細は、この図のミにしては尽し難き ゆへ、別に器材の部の中、織機の具をわかちて委 しく録し置り、合せ見るへし、
第6巻, 21ページ, タイトル: アツトシカルヲケレの図 
第6巻, 22ページ, タイトル:
此図はアツトシを織りあけたるさま也、アツトシカル ヲケレといふは、アツトシアルは前にしるせしと同しく、 ヲケレは終る事にて、アツトシ造る事終るといふ事也、 其織りあけたるまゝのアツトシをウセフアツトシといへり、 ウセフは純色といふか如き事にて、織りあけたるまゝの アツトシといふ心なり、 本邦の語に、木綿の織りたる まゝにて、何の色にも染さるを白木綿といふか如し、アツトシ の織りあけたるさま図の如くに、下のかたの幅を狭くなし たる事は、上の方は身衣となすへきつもりゆへ、幅を 広く織り、下の方は袖となすへきつもり故、幅を狭く 織るなり、その身衣幅と袖幅とに織りわくるさかひを トシヤトイと称す、トシヤは袖をいひ、トイは切る事をいひ て、袖を切るといふ事なり、又衣に製するところの 長短もかねて、著る人のたけをはかり定め置て、少しの 余尺もなきよふに織事なり、
第6巻, 23ページ, タイトル: アツトシウカウカの図
アツトシウカウカといへるは、ウカウカは縫ふ事を いひて、アツトシを縫ふといふ事なり、是は前に しるせる如く、著る人の形ちにより、たけの長短をハ かねてよりはかり定めて織る事ゆへ、衣を縫んと すれは、まつ初めにたけを定め置たるところより
第6巻, 24ページ, タイトル:
切り、またそれを二つにきりてこれを身衣になし、背の ところは上より下まて縫ひ通す也、それより肩の 左右を弐寸五分ほとに切りて、其きりしところに木綿 にてもアツトシにても外のきれを入れて縫ひつくる なり、其かたちまつ襟ともいふへきか如し、委しくハ 図を見てしるへし、すへてその縫ふといへるはアツトシ の耳と耳とを合セ、糸をもて巻さまに縫ふ事也、 かくの如くに縫ふ事終りてより、背のところに木綿 の切をもて種々のかたちを刺繍する事、後の 全備の図のことし、
第6巻, 25ページ, タイトル: トシヤウカウカの図 
是は織りあけたるアツトシのうち、前にしるせし ことく身衣を切りとりて、その残りたるところにて 図の如くなる筒袖を造るなり、これをトシヤウカ ウカと称す、トシヤは袖の事にて、袖を縫ふと いふ事なり、
第6巻, 26ページ, タイトル: アツトシミアンベの図
これは前にしるせし身衣と袖とを縫ひ合セ、背の ところに刺繍の文をつけ、其外袖と裾との縁にもかさりを
第6巻, 27ページ, タイトル:
なして衣の製全くとゝのひし図也、是をアツトシミアンベ と称す、ミは著る事をいひ、アンベは物といふ事にて、アツトシ の著るものといふ事也、すへて此衣は夷人の平日服するものなれ とも、他の獣皮・鳥羽とふにて製したる衣とは格別に たかひて、礼式の服のことくに尊ふ事也、ことに女子なとは 時により下に鳥羽・獣皮とふの衣を著する事ありても、 いつれその上にこのアツトシの衣を 本邦の 俗にかいとりともいふへきさまに打かけて服す、もし しからすしてたゝ鳥羽・獣皮とふの衣のミを服する をハ、甚の無礼となして戒る事なり、その厳密なる 事、女子衣服の製度ともいふへし、たゝ女子のミにあらす、 総説にもしるせし如く、男子といへともまた此衣を尊ミて、官 長の人にま見へおよひ、祭祀とふよろつ謹ミの時にのそミては、シツ トク・シヤランベとふ装束ともいふへきものなきものは、ミなこの アツトシのミを服用す、其外鳥羽・獣皮とふの衣はかたく 禁止して著用する事なし、

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