蝦夷生計図説

さすの図

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さすの図

さすといへるは、もと 本邦の言葉にして、
茅葺の屋を造る時図の如く左右より木を合せ
たるものをいふ也、是を夷人の語に何といひしにや
尋る事をわすれたる故、追て糺尋すへし、 
 
本邦に用るところとハ少しくたかひたるゆへに図し
たる也、此外屋に用る諸木のうち、棟木は造れる
さま常の柱とたかふ事あらす、是を夷語にキタイ
ヲマニといふ、キタイは上をいひ、ヲマは入る事をいひ、ニは
木をいひて、上に入る木といふ事なり、梁は前に図し
たる桁と同しさまに造りて用ゆ、是を夷語に
イテメニといふ、其義解しかたし、追て考へし、又  
本邦の茅屋にながわ竹を用る如くにつかふ物をリカ
ニといふ、是は細き木の枝をきりてゆかミくるいとふ有
ところは削りなをして用る也、此三種のもの大小のたかひ
あるのミにて、いつれも常の柱とことなる事ハなきゆへ、
別に図をあらハすに及はす、

☆ 「さす」というのはもともとわが国のことばで、茅葺きの家を造るとき、図のように左右から木を合わせたものをいうのである。これをアイヌ語でなんというのか聞くのを忘れたので、改めて聞きただすことにしよう。

(さすは)わが国で用いているものとはすこし違っているので図示したのである。このほか、家で使う種々の木のうち、棟木を造るようすは通常の柱と違うことはない。これをアイヌ語でキタイヲマニという。キタイ【キタイ:kitay/てっぺん、屋根】は上ということ、ヲマ【オマ:oma/にある、に入っている】は入ることをいい、ニ【ニ:ni/木】は木をいうから上に入る木ということである。
梁は前に図示した桁と同じように造って使う。これをアイヌ語でイテメニ【イテメニ:itemeni/梁】という。その意味は解釈できない。改めて考えてみたい。
また、わが国の萱葺きの家でながわ竹?を用いるように使うものをリカニという。これは細い木の枝を切って、ゆがみや狂いなどがあるときは削りなおして使うのである。これらの三種類のものは、大小の違いあるのみで、どれも通常の柱と違いはないので、格別、図示することはしない。