蝦夷生計図説

舟敷作り立る図 二種 

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舟敷作り立る図 二種 

おもむきにて、舳・艫両縁より初めすへて形ちの
善悪を考へ、其外水上往来の遅速、波濤を
渉るの便利、あるひは出岸着岸、またハ陸にあけおろ
しの事とふまて、子細に舟の様子を
熟慮して、其高低曲直を漸々に削りなをす
なり、すへて夷人の境いまた規矩といふものも
あらす、唯かゝる工夫のミにて作り出せるゆへ、
心を労し、思を焦し、数月をかさぬるにあらすし
ては、敷一つを作り得る事もならさる也、その
うち月日を重ね、纔に作りたる数にも彼是の
便利あしけれハ、徒にすつるもありて、其辛苦を
きハむる事言葉に尽しかたし、

状態によって、みよしやとも、両側の縁などをは12じめ、船体すべての形を考え、そのほか水上往来の早さ、波をこえる性能、あるいは岸を離れるときや着岸、おかへ上げたりおろしたりといったことにまで、ことこまかに舟の状態を熟慮し、船体の高さかげんや曲がりなどを少しずつ削りなおしていくのである。
アイヌの人びとには物差しというものがないので、こういう工夫だけで舟を造り上げていくため、心労やいろいろ考えること数ヶ月にもおよぶことなくしては、船体ひとつを造りだすこともできないのである。そうして月日を重ねてわずかに造った数のうちにもいろいろの不具合があれば、捨ててしまうのもあるようにその辛苦をきわめること、実にことばにいいつくすことは出来ない。