蝦夷生計図説

プヲツタシツカシマの図

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プヲツタシツカシマの図

是は剪り採りし穂を収め置事をいふなり、
フヲツタシツカシマといへるは、フとは 本邦にしてハ
蔵なといへる物のことく、物を貯へ置ところ
をいふ、

   其造れるさまも常の家とは事替りて、
いかにも床を高くなして住居より引はなれたる
所に造り置事也、委しくハ住居の部に
ミえたり、

ヲツタは前にいふ如くにの字の意也、シツカシマとハ
大事に物を収め置事をいひて、蔵に収め置と
いふ事也、其収め置にはサラニツプといへる物に
入れて置も有、あるは俵の如くになして入れ置
もある也、

   サラニツフといへるは草にて作れる物也、俵に
するといへるも多くは夷地のキナといへる物を
用ゆる也、二つともに委しくハ器財の部にミへたり、

此中来年の種になすへきをよく貯へ置にハ、
よく熟したる穂をゑらひ、茎をつけて剪り、よく
たばねて苞となし、同しく蔵に入れをく也、

是にてまつアユウシアマヽを作り立るの業は
終る也、すへて是迄の事平易にして、格別に
艱難なるさまもなきよふにミゆれとも、ことに
然るにあらす、夷人の境よろつの器具とふも心に
まかせすして力を労する事も甚しく、また
山野には昼の間□蝣あるは蚊なとの類
多して手足をさし、疥瘡のことくになり
て、其辛苦をきハむる事いふはかりなし、

これは、刈り取った穂を収め置くことをいう。フヲツタシツカシマという語のうち、「フ」はわが国でいうところの蔵のように、物を貯え置く場所を表す。

* その建築形態は通常の家とは異なり、何とか工夫して床を高くしつらえ、住居から引き離れた場所に建てられるものである。詳しくは本稿「住居の部」に記してある。

「ヲツタ」は前述の通り「~に」という語を表す。「シツカシマ」とは大事に物を収め置くことをいう。合わせて「蔵に収め置く」という意味である。収めておくに際しては、サラニツプという物に入れておくことがある。また、俵のようにこしらえて入れておく
場合もある。

* サラニツフというのは、草で作られたものである。俵にこしらえる場合も、多くは蝦夷地のキナというものが用いられる.詳しくは本稿「器材の部」に記してある。

このなかから来年の種とするものを良い状態で貯えておくには、よく熟した穂を選び、茎をつけたまま刈り、よく束ねて包みとし、他の穂と同様に蔵に入れておく必用がある。

これでアユウシアママを作りたてる作業は終了である。全般にこれまでの作業は平易であり、格別に困難な様子などないように見えるが、そうではない。アイヌの人々の住む地では、諸種の農器具なども手に入らず、従って労力を費やすことが甚だしい。また、
山野には昼の間はブヨや蚊などの類が多く、手足を刺し、カサブタのようになってしまう。その辛苦は言葉では言い表せないほどなのである。