蝦夷生計図説

ハルケイナヲの図

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ハルケイナヲの図

称す、かきたれといへる事はもと削り垂ると
いはんか如き事なるを、紙にて製せし物に称する
事、其義あたれりとも思はれす、これは古へ紙
製の事いまた流布せさりし時にハ、辺鄙の
民家とふにてハ、これらの物ミな質白なる木を
用ひて製せしより、おのつからかきたれとふの
名は唱へしなるへし、今夷人の俗に此イナヲ
を用ゆる事は、まさしくかの 本邦上古の
時、木にて製せしかきたれの遺風を伝へし
事とミゆる也、

いるものがある。
「かきたれ」という言葉は、元々は削り垂れるというような意味だったのであろうが、それを紙でつくったものを表わす言葉として用いるのは、意味的に言ってあたっているとは思われない。これは、紙がまだ流布していなかった古い時代に、辺鄙の地の民家などにては、材質の白い木を用いてこうしたものを作っていたため、自ずから「かきたれ」という名が唱えられたものと考えられる。現在アイヌの人々がこのイナヲを用いているのは、まさしくわが国における上古の時代に木でつくられた、かの「かきたれ」の遺風を伝えているものと見ることができるのである。